平成25年12月12日に開催された理事会において「警察犬7犬種に対する繁殖管理規定の遵守」が決定され、先行実施されていたシェパード犬種と他6犬種が漸く共通の立場に置かれることとなり、本年7月1日生まれ以降の一胎犬登録から実施されることは会報2月号で既に告知されている通りです。
詳細な内容・手順等については会報等でご確認願いたいのですが、一部の会員から個体識別法のマイクロチップの挿入について問い合わせがありました。それは、マイクロチップを挿入することによって、その挿入部位に繊維肉腫の発生が認められるといった症例が報告されていることについて、挿入に不安感を抱いておられるといった点についてです。
世界的に個体識別の手法としてマイクロチップ挿入法が主流となってきていること、また我が国においても環境省を始めとして農林水産省動物検疫所、(公)日本獣医師会がマイクロチップの推進姿勢を見せていることは説明を加えるまでもなく、会員の皆様も重々ご承知のことと思います。
マイクロチップ挿入については、異物を体内に埋め込むことであり、このことによる弊害が発生しないものなのか当初から危惧されていましたが、当然のことメーカーサイドはその点を十分に考慮して研究開発を行っていますし、国内で本品を販売している最大手メーカー(アイディール・共立製薬)に問い合わせても、既に7万本が販売されているが繊維肉腫の発生事例報告は受けていないとの回答を得ており、これに関する国内からの発生報告は現在のところ目にしておりません。
ただし、海外からは近年数編の関連論文が学術誌に掲載されており、恐らくはこういった情報を得られて不安感を抱かれているものと察するところです。Vet.Pathology(2006)にM.Vascellari等が発表している「マイクロチップ挿入部位においてワクチン関連肉腫の特長を有する繊維肉腫の発生が認められた犬の一例」を一読しても、この一例は9歳の牡のフレンチブルドッグであり、他の文献を調べても当協会公認7犬種以外の種類の報告となっています。
また、ここで触れられている「ワクチン関連肉腫」とあるのは、近年犬猫でワクチン接種後に接種部位に発生する繊維肉腫のことで、全ての犬に発生するものではなく特異体質であろう言われています。因って、前述の論文についてもマイクロチップが原因で発生した繊維肉腫であるとは断定しておりません。これについては、さらなる研究を進め多くのデータが集まった後に明確な答えが出るものと考えています。少なくとも正常体質の犬に発生する事例ではないと懸案しています。
近年、近親繁殖が重複されたことによる濃厚な血液所有犬の存在、その結果であろう特異体質や特異な遺伝質の保有犬による弊害も耳にしております。その繁殖内容について、当協会においては現行の「繁殖管理規定」並びに「犬籍登録規定」での登録体制では、会員所有犬の十分な個体情報を把握することが成されておりません。その部分が進歩すれば、協会として充分な繁殖指導が出来るものと信じております。
以上の点を鑑み、マイクロチップ挿入が100%安全なものとは言えないまでも、ほぼパーフェクトに近い個体識別手法であると確信しております。信頼のおける血統書作成のために、会員各位のご理解を賜りたいと考えております。 |